Bike

「天空のストラーダ」に登場するバイク解説
By OSABOW

NO.01
HONDA CB550 four-Ⅱ

ミドルアッパークラスは合理性から生まれた

本題のCB500だ。ぼくはこのバイクが今でも大変気に入っている。一番好きなバイクと言える。ミドルアッパーという中途半端な排気量も気に入っている。バイクを操る力量の差はあるが、日本の道路事情を考慮するとこれがベストチョイスだ。それは今も昔も変わっちゃいない。クルマの渋滞に縦列する大排気量バイクを見るたびに、その考えは独りよがりから確信に変わる。

1971年、CB500 fourが発売された。空冷マルチのなかでもエンジン形状が群を抜いて美しかった。並列4気筒の腰上(シリンダー部)を垂直にレイアウト。シリンダーから伸びるエキゾーストパイプの曲部は思わず手で触りたくなった。実際ぼくは、若さ故の過ちでチンチンに焼けたそいつを触って火傷した。安物のグローブが溶けエキパイに黒いお焦げが付着した。こいつは洗っても取れない。バイクにタトゥーを入れたと同様で心が傷んだ。エキパイの曲線はそれほど美しかった。

発売当初のカタログは斬新だ。英国紳士が騎乗した馬とCB500 fourが並んでいた。その写真が表紙を飾った。とてもインパクトがあった。この写真がCB500 fourの開発コンセプトをズバリ表現していた。

英国製バイクの象徴とも言えるバーチカル(直立)ツインエンジンを横目に、日本の高性能インラインフォア登場と謳ったのだ。しかし、その真意は、バイクをこよなく愛する英国紳士(貴賓+大人)に対する尊敬の意が込められていたと思う。

この後継モデルが1974年に発売されたCB550 four。そのネーミング通り排気量は0.498(L)から544ccにアップした。当時はスペック表記もメーカーごとにバラバラだった。それを統一する意味で排気量の表示も「L→cc」に変わった。最大出力は48馬力から50馬力にわずか2馬力向上。しかし、実際に乗ってみるとそれ以上に感じた。そんな記憶がある。エンジン性能も含め余裕のある走りを感じた。

1975年「天空のストラーダ」で登場する三代目のCB550 four-Ⅱが発表された。ジェントルなイメージの強いCB550 fourから「super sport」路線に大きく趣を変えた。

CB550 four-Ⅱはフューエルタンクやマフラーを変えた。見かけだけは「スーパースポーツ」に、まんまと仕立て上げられた。しかし、お世辞のひと言もでないほど不細工で情けなかった。中間排気量という「ハンパもん」のイメージが強いうえにこのデザイン。当然人気薄だった。しかし、そのポテンシャルの高さはCB500改で大活躍した故・隅谷守男さん、故・木山賢吾さんの大活躍で実証済みだった。「みんなわかっちゃいないな」。ぼくはとても残念な気がしてならなかった。

  • HONDA CB550 four-Ⅱ

    HONDA CB550 four-Ⅱ(画像はホンダ二輪広報ホームページより転載)

  • HONDA CB500 four

    HONDA CB500 four(画像はホンダ二輪広報ホームページより転載)

パーツはそれなりの性能だが結集すると高性能に化ける

「天空のストラーダ」の主人公・倉嶋弾は文中「CB550 four-Ⅱに乗ってバイクが楽しくなった」と言った。その理由はCB550 four-Ⅱの完成度が高く換言すればだれが乗っても「バイクが上手になった」と錯覚させたからだ。じつはバイクの腕が上がったわけではない。バイクを操る自信と向上心が芽生えたという表現の方が正しいかもしれない。

そして、倉嶋弾は自分の勘違いからバイクに惹かれて行く。徐々にライディングテクを磨くわけだけが、その教材としてはもってこいのバイクなのかもしれない。

ぼくは学生時代、それも高校生という分際でCB500 fourを親に買ってもらった。今では考えられないが、その理由は親父がバイク好きだったからだ。CB750やスズキGT750等のナナハンに興味はなかった。倉嶋弾と一緒でCB550 four-Ⅱを買った。プレスのバイトをしながらローンをどうにか完済した。CB500 fourからはじまり数年間で2台乗り継いだことになる。

だからと言うわけではないが、その長所も短所も良く知っている。CB500 fourからCB550 four-Ⅱ乗り換えるとき、バイク仲間から馬鹿にされた。それは性能云々の問題ではなくそのデザインにあった。ティアドロップ形状のタンクは、ガソリンキャップを収納するタイプ。タンク上部はフラットでツーリングバッグを固定するには都合が良かった。馬鹿にされた一番の理由は、あれほど惚れ込んだエンジン型式に似合わせない集合マフラーが装備されていたことだ。

画像を見てわかるとおりこれがとてつもなくカッコ悪かった。CB550 four-Ⅱはとにかく静かだ。集合マフラーの消音効果は絶大。フルフェイスを被って走行すると排気音がほとんど聞こえない。風切り音の方が勝っていた。バイクの魅力のひとつはその排気音だが完全に失せていた。ハンドリングはスムーズでなんの癖もなく素直だ。低速から高速まで扱いやすさが変わらない。このハンドリング特性で何度も転倒を免れた。ワインディングの切り返し、身のこなしに安定感があり軽快だった。これはパワー特性としなやかなダブルクレードルフレームの相性が抜群に良かったからだ。コーナリング中のヨーイングもなぜか心地良く感じた。

フロントサスはテレスコピック。リアサスはバネレートを専用工具で5段階調整できる。この前後サスもけっしてハイスペックなシロモノではない。そのプアな側面も確かにあった。フレームがその弱点を十分カバーした。バイクを構成するパーツはそれなりの性能だが、それらが結集すると高性能に化ける。CB550 four-Ⅱはそれを具現化したバイクと考えて良い。

エンジン特性もその例外ではない。すべての回転域でトルクの谷がなく、ミッションの選択さえ間違わなければ期待するパワーは瞬時に得られる。ナナハンクラスのパンチ力には及ばないが、それは限定されたロケーション(直線の続く高速道路やサーキット)での話だ。都内やワインディングではナナハンより扱いやすく機動力は勝っていた。

ポテンシャルは高いがウィークポイントもある

ウィークポイントも少なからずあった。その筆頭はフロントディスクブレーキの甘さだ。レバーのタッチ、ストッピングパワーもヤマハの2スト勢(RD系)に較べてプアだった。ぼくはダブルディスクにすぐ変更した。あえて追記するなら、ダブルディスクを装着した影響でフロントハブベアリングが耐えきれず交換時期が早まったことだ。また、フロントインナーチューブ上部のメッキ処理を省かれ新車時から錆びていた。ライトステーで錆は隠せたが、手を抜かれたようで気にくわなかった。

CB550 four-Ⅱに限らず、当時のバイクはプラグキャップとプラグコードの防水性が弱く、雨中走行でたまにミスファイヤーを起こした。これも社外の対策パーツに交換した。夏場は空冷エンジンにとって過酷な季節だ。エンジンオイルの温度が一気に上昇する。湿式クラッチが熱ダレを起こし切れが悪くなる。エンジンもパワーダウンした。ウェットサンプの泣きどころだが、これも四輪シビック用オイルクーラーを装着して対処した。

バンクセンサーという謎の装備もセールスポイントだった。しかし、謳い文句ほどたいしたことはなかった。ステップ下部にスチール製の凸を付けただけだ。峠を走ると「ジャリジャリ」擦ってうるさかったので取っ払った。そしてピロボールリンク式のアルミ製バックステップに変更した。巨大で醜く感じたメッキの集合マフラーは、買った数時間後には取っ払った。外して両手で持つと恐ろしく重く感じた。当然、ヨシムラの集合管を装着した。もちろん手曲げだ。必然的にセンタースタンドも取っ払った。タイヤも英国製ダンロップTT100に履き替えた。高価だったがグリップ性能は国産の比じゃなかった。これらのカスタムを施すと軽量化も含め走行性能はさらに向上した。 軽度のウィークポイントはあったが、CB500との出会いがなかったらバイクに乗り続けることはなかったと思う。バイクは走るだけの道具ではない。バイクに乗れば友人もいっぱいできる。それを教えてくれたのがCB500 fourだと思っている。野暮な話だが当時の新車価格は約40万円だが、現在の中古車市場をちょいと覗いてみると程度の差はあるが約80万円前後で販売されている。約40年前のバイクが、当時の販売価格の約2倍に跳ね上がっている。さすが‘80年代前後のバイクは人気がある。バイクのわかるバイク乗りが増えているという証だ。それに引き替えぼくの仕事効率は約半減。これが現実だ。CB500 fourシリーズに嫉妬しながらまたお目にかかりましょう。次回はあのZⅡにするか……。

SPECIFICATION(昭和50年6月24日)

HONDA CB550FOUR−II

  • 全長(m):2.115
  • 全幅(m):0.835
  • 全高(m):1.110
  • 軸距(m):1.405
  • 最低地上高(m):0.160
  • 車両重量(Kg):206
  • 燃費(Km/L):35
  • 登坂能力(tan):0.55
  • 最小回転半径(m):2.4
  • エンジン型式:空冷4サイクルOHC4気筒
  • 総排気量(cc):544
  • 内径×行程(mm):58.5×50.6
  • 圧縮比:9.0
  • 最高出力(PS/rpm):50/8,500
  • 最大トルク(Kg-m/rpm):4.4/7,500
  • キャブレター:PW22
  • 始動方式:キック式・セルフ式併用
  • 潤滑方式:圧送式、飛沫式併用
  • 潤滑油容量(L):3.2
  • 燃料タンク容量(L):17
  • クラッチ形式:湿式多板
  • 変速機形式:常時噛合式5段リターン
  • 変速機操作方式:左足動式
  • 総減速比:6.665
  • 変速比 1速 2.353
  • 2速 1.636
  • 3速 1.269
  • 4速 1.036
  • 5速 0.900
  • フレーム形式:ダブルクレードル式
  • 懸架方式
  • 前:テレスコピック式 後:スイングアーム式
  • キャスター(度):64°0′
  • トレール(mm):105
  • タイアサイズ:前:3.25S19-4PR 後:3.75S18-4PR
  • ブレーキ形式
  • 前:油圧式ディスク
  • 後:ロッド式リーディングトレーリング
  • 前照灯:50W/40W 170φ
  • 尾灯:8W(番号灯兼用)
  • 制動灯:23W
  • 方向指示器:前: 23W×2 後: 23W×2
  • 警音器:渦巻型電気式
  • 速度計:渦流式
  • 回転計:渦流式
  • 発売日:昭和50年6月24日
  • 価格:39万8000円(全国標準現金価格)
  • 生産計画:月産4,000台(輸出を含む)

プロフィール

OSABOW(オサボウ)

東京・世田谷生まれ。幼少期から父親の影響でバイクとクルマに興味をもつ。月刊ベストバイク、月刊ライダースクラブ、月刊クラブマン等のバイク雑誌編集長を経験。バイク雑誌に限らずゴルフ雑誌など数多くの男性誌編集長を歴任。その創作活動は広範囲に及び広告制作・宣伝プロモーションも手掛ける。現在、執筆と企画制作プロデューサーとして活躍中。

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